ホテルやヨーロッパのレストランで腕を磨いた松井康さんがオーナーシェフを務めるフレンチレストラン「NALA」。以前は北九州市小倉北区上到津で営業していましたが、2020年10月に八幡東区茶屋町に移転しました。

お店は1932年から続く「筑豊市場」の一角に位置しています。もともと筑豊市場の鮮魚店で仕入れを行っていた縁から、この場所への移転を決めたとのこと。ノスタルジックな市場とスタイリッシュな一軒家フレンチが並ぶ景観は「2021年度グッドデザイン賞受賞」と「第9回北九州市都市景観賞まちなみデザイン賞」を受賞しています。表に看板がないので、この風景を目印に訪れましょう。

移転後の大きな変化は、直火で焼き上げる薪窯を設けたこと。以前は炭火焼を用いていましたが、より自然に近い形を再現したいと薪窯を取り入れたそうです。「以前働いていたバスク地方のレストランで行っていた薪窯調理のおいしさが心に残っていました。薪窯だからこその香り、焼き目などをお楽しみください」と松井さん。

今回はランチの「おまかせコース」（4,400円）をご紹介します。
・アミューズ
・前菜2品
・魚料理
・肉料理
・デザート

と充実の内容。コース構成は変わりませんが、提供される料理はその日や季節によって変わります。何を味わえるかは、当日のお楽しみ。予約時にアレルギーなどについて確認があるので安心です。

前菜一品目の「ヤリイカのマリネとスモーク 冷製ポタージュ」。薪窯で焼いたヤリイカの身とマリネにしたゲソ、コーンやミョウガなどが入るコンソメジュレがかぼちゃの冷製ポタージュに添えられています。ポタージュは牛乳を使わず、自家製チーズを作る際に出たホエーを使ってのばしているのでさっぱりとした味わいです。

前菜二品目は「マツカワエビとナスの重ね焼き エビのベシャメルソース」。近海で獲れたマツカワエビをナスに重ねて薪窯で焼き上げた一品。プリッとしたエビとトロリと溶け出すナス、ベシャメルソースの濃厚な味わいを楽しめます。冷たい前菜、温かい前菜、どちらも夏らしさが詰まった一皿でした。

メインは魚料理と肉料理の2品。魚料理は「マナガツオの薪焼き バジルの香草ソース」。魚介類は近海産のものが中心で、この日の旬のマナガツオを使った薪焼きでした。目の前の薪窯で焼き上げられるマナガツオは、皮は香ばしく身はふっくらの絶妙な焼き加減。口に運ぶと薪焼きならではの香りが漂い、嗅覚を刺激します。上品な味わいの白身にズッキーニや空心菜を使った手打ちパスタ入りのソースがよく合います。

肉料理は「宮崎牛ランプの薪焼き ピペラドソース添え」。脂肪分が少ない赤身のランプ肉は柔らかく、肉本来のうま味たっぷり。バスク地方の定番ソース、パプリカを使ったピペラドソースを肉や甘長唐辛子のローストに絡めて味わいます。添えられたエゴマの葉と一緒に口に入れると、爽やかな風味がプラスされまた違った印象に。

デザートは「自家製チーズのチーズケーキ 作りたて牛乳アイス添え」。自家製のフロマージュ・フレを使ったチーズケーキはフレッシュな味わいとなめらかな口どけが特徴。添えられた牛乳アイスも手作りです。ドリンクはコーヒーや紅茶などから選べます。

提供されるメニューの一つひとつは素材や作り方にこだわりを感じるものばかり。「なるべく自分たちらしい味をと考えるうちに、自然とこうなりました」と松井さん。本当にここでしか食べられないものばかりを堪能できるコースです。

温かみを感じる店内。3卓のテーブル席のほか、薪窯のそばのカウンター席があります。ランチのほか、ディナータイムは4,400円と8,800円のおまかせコースを楽しめます。朗らかなおもてなしと、めずらしい薪焼き料理を堪能しに訪れてみてはいかがでしょうか。