喫茶店の食事メニューとして定番のオムライス。昔ながらのオムライスもいいですが、ひと手間加えた評判のオムライスを味わってみませんか。

平尾エリアにある、福岡のリノベーションビルの先駆け的存在「井谷ビル」の2階にある「喫茶 千歳」は、マスターの古場賢二さんが2020年にオープンした喫茶店です。神戸市や福岡市にある高級ホテルのレストランなどで長年腕を磨きながら、いつか喫茶店をオープンしたいと思い描いていた古場さん。「学生の頃に友人と一緒に喫茶店によく行っていて、いい思い出がたくさんあるんです。その頃の喫茶店の雰囲気のように、幅広い年代の方がくつろいで過ごせる場所を作りたいと思っていたんです」と喫茶店への思いを教えてくれました。

扉を開いた先には柔らかな光が差し込む心地いい空間が広がります。席と席の間隔も広く、ゆったりとした雰囲気です。

レストランの料理人を務めた古場さんが作る料理は、オムライスやナポリタン、ドリアなど喫茶店らしいメニューでありながら、ひと手間加えた本格派。なかでも人気を集めているのが「ビーフ・オムライス」（950円）です。

オムライスは卵でライスをくるむスタンダードなタイプ。糸島産の卵の余分な水気を切り、細かい網で漉すことできめ細やかな食感になり、あざやかなフライパンさばきで美しいフォルムのオムライスが完成します。その上にのるのは薄切り肉のビーフソテー。柔らかい肉質を保つためにさっと火を通し、タマネギや醤油がベースのシャリアピンソースで仕上げたものです。

自家製のソースは赤ワインをたっぷり使い、トマトなどの野菜や牛肉などを煮詰めたもの。すっきりとした酸味とワインの風味が効いたリッチな味わいのソースです。

卵に包まれたライスはケチャップライスではなく、ベーコン、タマネギ、マッシュルーム、コーンなどを入れ、鶏ダシを効かせたバターライス。卵の甘さやソースのうま味をしっかりと感じられるのは、コクがありながらもあっさりとしたバターライスのおかげかもしれません。柔らかいビーフソテーのおいしさも相まって、高級感のある味わいを楽しめました。

ドリンクは「ミルクセーキ」（700円）をお願いしました。淡い卵色のミルクセーキにアイスクリームと赤いチェリーがのり、愛らしいですね。ちょうどいいまろやかな甘さで、食後のドリンクにもぴったり。

ミルクセーキはミキサーではなく、氷を入れたシェイカーに卵黄と練乳を入れて作られます。マスターがシェイカーを振って作ってくれるので、特別感がありますね。そのほか、ホテル時代から付き合いのある青果店から仕入れるフルーツを使ったデザートも人気です。

店名の「千歳」は日本の伝統色「千歳緑」から付けられたそう。「千歳緑」は松の葉のように深い緑のことで、インテリアや外観にも深い緑色が取り入れられています。

「内見をした時に窓から見えた緑が印象的だったので、この店名にしました」と古場さん。取材時はまだ芽吹きの前でしたが、これからの季節は大きな窓の外にきれいな新緑が広がりそうですね。窓辺の特等席で、食事や喫茶を楽しみながらゆっくり時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。