イタリア仕込みの本格的な手打ちパスタを求めて訪れたのは、中央区笹丘の住宅街にある「La Lucanda（ラ ルカンダ）」。2011年の開業以来、グルメ通が足しげく通う店として知られる一軒家イタリアンです。

石畳の階段を上った先には、木の温もりを感じる居心地の良い空間が。奥には４〜６名で利用できる個室も用意されています。

店を営むのは、本場イタリアの星付き店や静岡の「マンジャペッシェ」、東京の「アルポンテ」などの有名店で腕を磨いたオーナーシェフの藤本慶輔さん。実家は創業1982年の老舗イタリアン「カサーレ」（西新）で、幼い頃からイタリア料理に親しんできたといいます。

「フィレンツェの三つ星など、高級なリストランテでも働きましたが、最も惹かれたのは、シンプルながらに奥深いイタリアの郷土料理でした。日本人がいない環境で本場の仕事や文化を学びたくて、最後に行き着いたのがイタリアの北西部・ロンバルディアにあった『ラ ルカンダ』というお店でした。店名もそこから譲り受けたものです」と藤本さん。

「La Lucanda」では、そんな藤本さんが作るイタリアの郷土料理を楽しめます。主体となるのは、ピエモンテやロンバルディアといったイタリア北部の郷土料理で、名物は常時8種類ほどを揃える手打ちパスタです。なかでも手打ちパスタが登場するランチコースは「A 2,530円」「B 3,850円」とお値ごろ。本格的な料理をリーズナブルに味わえると評判です。

Aコース、Bコースともに、最初は突き出し代わりの自家製パンと豚のリエットが登場します。豚のリエットは余分な脂をしっかりと取り除いているので独特のクセやくどさがなく、滑らかでうま味たっぷり。自家製パンは全粒粉入りとフォカッチャの2種類で、リエットもパンも「お好きなだけおかわり自由」というから驚きです。

続いてBコースで提供されるのは、糸島をはじめとした農家や産地直送の旬野菜を主役にした「前菜の盛り合わせ」です。プーリア産のブラッティーナチーズにオレガノでマリネした糸島産のトマトを添える「プリエーゼ」や、幸水梨のマリネとともに味わう長崎県産のハガツオなど8品と自家製ドレッシングを和えたサラダが盛り込まれています。

蒸し焼きにして作るフランのような一品「バターナッツカボチャのスフォルマート」や、豚の軟骨で作るテリーヌにパセリやオリーブで作るソース「サルサヴェルデ」を添えた一品も美味。ヤシの芽や白ナス、ハスイモといった珍しい食材も登場し、どれも手が混んでいます。

続くBコースの自家製手打ちパスタは、ロング、ニョッキのグラタン、ショートパスタ、手切りタヤリン（極細卵黄パスタ）、イカ墨のフェトチーネなど6種類から選ぶことができます。取材時には「アニョロッティ・ダル・プリン」（＋550円）をいただきました。

「アニョロッティ・ダル・プリン」はピエモンテ地方を代表する伝統的な詰め物パスタ。薄く伸ばした生地はなめらかで、中から牛・豚・鹿・猪などの肉とホウレン草を煮込んで作ったリエット状のタネがあふれます。仕上げに削ったチーズやトリュフの香りも相まって、これは食べるのが止まらないおいしさ！

さらにBコースはメイン料理も肉と魚料理の3種類から選べ、写真は「宮崎県産この華牛 ランプ肉のタリアータ キノコのトリフォラーティ（炒め煮）」です。力強い赤身のうま味に、ポルチーニ茸の豊かな香り、赤ワインで煮込んだゴボウなどの野菜がよく合います。

そして、最後のドルチェも盛り合わせ。マンゴーのソルベを添えたグレープフルーツジュレやティラミス、アマレットが香るピエモンテの郷土菓子「ボネ」など、細部まで丁寧に作られたおいしさに感激です。

本格的な手打ちパスタ、これほど充実のコースをランチから気軽に楽しめるなんて贅沢な気持ちになりますね。予約をしてから出かけるのがおすすめです。