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こんなところに?アパート&ビルの隠れ家ショップ

こんなところに?アパート&ビルの隠れ家ショップ

古いアパートやビルの一室。「こんなところに?」と驚く場所に佇むお店を訪ねてみませんか。素敵に改装された小さな部屋に広がるのは、こだわりの詰まった大きな世界。プライベート感のある空間で、人やものとの出会いを楽しみましょう。

physis

型にはまらないセレクトを通し、偶然の出会いを楽しむ

郵便受けに記された店名や階段の小さな看板など、わずかな情報を手がかりにたどり着いた、古いビルの一室。セレクト&ヴィンテージショップ「physis(ピュシス)」は “隠れ家”という表現がぴったりのお店です。店主の井上愛理さんは、天神にあった「アッシュ・ペー・フランス」での勤務を経て、2021年2月にこの場所に拠点を構えました。

コロナ禍で勤務先が休業し、思うように店頭に立てなかった時に井上さんが気づいたのは「オンラインショップは便利だけど、やっぱりお店が好き」ということ。「お店を訪れると、探していたものだけでなくふと目についたものを手にすることがありますよね。そういった実店舗ならではの偶然の出会いを楽しんでもらいたいと思い、自分のお店を開きました」。

入居しているのは、二日市にある築50年ほどのビル。住居用にリノベーションされたままほとんど手を加えていないという内装は、まるでこの店のために整えられたかのようです。南向きの窓の先には「二日市八幡宮」の大きな楠が。葉擦れの音や木漏れ日の心地よさもこの場所を選ぶ決め手になったそうです。

店内に並ぶのは洋服やインテリア、アートグッズ。いずれも国籍や時代、ジャンルを限定せずに選ばれたものです。例えば、ヴィンテージの洋服は、ヨーロッパやアメリカのワンピースやシャツがあるかと思えばアフリカの日常着やDCブランド全盛期の頃の日本製ジャケットが並んでいたりとさまざま。インテリアのアイテムは60年代のドイツの花器やスペインの陶器など存在感のあるものが選ばれています。個性も出身も異なるものたちがこの場所に置かれることでそれぞれを引き立て合い、ますます魅力的に見えてくるのは井上さんのフィルターを通したからこそ。セレクトショップの醍醐味を感じさせてくれます。

福岡を拠点とするソイワックスキャンドルの「c’è​​​ c’è (チェチェ)」や、フランスのフレグランスブランド「MAD et LEN(マドエレン)」などの取り扱いも。新しいものも、物語や背景に魅力を感じられるものが選ばれています。洋服はデザイナーの世界観が確立されていて、福岡ではあまり見かけないブランドをセレクト。デザイナーを招いた受注会も定期的に開催し、つくる人と受け取る人が出会える場を積極的に作っています。デザイナーの思いを聞いて手にした洋服は、きっと特別なものになりますね。

「場所や時代が違うものをここに集めることで、出会うはずがなかったものたちが新しい価値を生み出すのが楽しいですね。一般的に評価されているものだけを集めるのではなく、私の視点でものを選び、いい意味で裏切りのあるお店を作っていきたいです」と井上さん。

●physis(ピュシス)

住所:筑紫野市二日市中央3-6-6 大田ビル306
電話:080-4317-7884
営業:12:00~19:00
定休日:不定 ※ホームページやインスタグラムに掲載
アクセス:西鉄天神大牟田線「西鉄二日市」駅より徒歩7分
ホームページ: https://www.physis-store.com/
Instagram: @_p_h_y_s_i_s_

六本松のくつした屋さん How's That

一度履いたら手放せない、こだわりの靴下

六本松1丁目の小さなアパートに掲げられた“くつした”の文字。「六本松のくつした屋さん How’s That(ハウズザット)」は、靴下生産量日本一の町・奈良県広陵町で生まれ育ち、小学校の同級生という綾部舜さん・光里さん夫妻が営む靴下専門店です。二人とも広陵町の地場産業である靴下に携わっていて、結婚を機にルーツのある福岡にお店をオープンしました。

もともとは畳敷きの2間だったという部屋を改装した店内。業者と一緒におふたりも天井の張り替えや壁塗りなどを行ったそうです。「お客さまとゆっくりお話ができるように、中心地から少し離れたこの場所を選びました」と光里さん。

扱うのは、オリジナルブランド「How’s That」のほか、光里さんの実家の靴下工場のファクトリーブランド「Hoffmann」、「ORGANIC GARDEN」の3ブランドの商品です。「Hoffmann」はドイツ系アメリカ人のホフマンさんという架空の人物が愛用する靴下をコンセプトに造られていて、色柄に個性があるものが中心。「ORGANIC GARDEN」はオーガニックコットンを使用し、染めも天然染料を用いて生産されています。

そして、オリジナルブランド「How’s That」の靴下は、戦後間もなくから使われている日本製の編み機を使い、職人の手で1台から1日約50足が編み上げられています。1日120足ほど生産するのが一般的ですが、速度を落としてゆっくり編むことで、生産時の糸の摩擦が抑えられ、丈夫で肌触りのいい靴下になるのだそうです。

ツートンカラーの靴下は、他の靴下を作る工程で残ってしまい、廃棄されるはずだった糸も使われています。おふたりが「初恋」「夏のポップな感じ」など言葉で伝えたイメージを、職人さんが自由に表現しているそうです。「届いた箱を開けるのが楽しみですね」と光里さん。できあがった靴下を見て「ラベンダー畑」「ハムエッグ」などの名前が付けられます。写真のミドル丈(各1,760円)のほか、スニーカー丈、くるぶし丈なども。サイズは21~30cmに対応しています。そのほか、キッズ&ベビー用の靴下もあります。

「靴下の存在価値を上げていきたい」と語る舜さんと光里さん。「洋服や下着にはこだわるけれど、靴下は『履けたら何でもいい』という方もいると思います。自分の生活スタイルを考えて“靴下を選ぶ”という行為に価値を見出してもらえるとうれしいですね」と光里さん。「伝統産業を途絶えさせないためにも、生産者である私たちがもの作りの背景を伝えることの大切さを感じています。価値を感じ、納得して商品を選んでもらえる場にしていきたいです」と舜さん。靴下にかける真摯な思いは福岡の人々にもしっかり届いているようで、取材時も常連の方や口コミを聞いた方などが次々と訪れていました。

店内には、編み機のレプリカや製造工程途中の靴下をディスプレイ。何気なく毎日履いている靴下が作られる様子を知ることができるのは、ちょっとした社会科見学気分を味わえて楽しい気分になります。秋冬はひっきりなしの来客がありますが、春や夏は割とのんびり営業しているそうなので、ゆっくり話を楽しめそうです。これからの季節に向けて麻混や麻100%などの靴下も揃っているので、足を運んでみてはいかがでしょうか。

●六本松のくつした屋さん How's That(ハウズ ザット)

住所:福岡市中央区六本松1-4−11 MM202号
電話:なし
営業:11:00~18:00
定休日:不定 ※ホームページやインスタグラムに掲載
アクセス:西鉄バス「六本松大通り」バス停より徒歩3分
ホームページ: https://www.howsthat-shop.com/
Instagram: @howsthat_shop

ぱん こさお

ユニークなアイデアから生まれるオリジナルパン

2021年11月にオープンした春日市「ぱん こさお」は、白木原駅からほど近いビルの1室にあるパン屋さん。10年以上さまざまなベーカリーで経験を積んだ店主の中島さおりさんがひとりで切り盛りしています。

建物の1階に位置し、ベランダ側から出入りします。かわいいナマケモノのイラストが目印です。隣では中島さんの友人が営むカフェ「アニパニ」が営業中。パン好きの大家さんがここにベーカリーを開いてくれる人を探していたところ、「アニパニ」の方から中島さんに声がかかり、オープンに至ったそうです。

ターコイズブルーの壁が印象的な店内には、毎日45種前後のパンが並びます。食パンやクロワッサン、メロンパンなどの定番パンがありつつ「ほかのパン屋さんにはない物をつくりたい」という思いから、さまざまな素材を組み合わせたユニークなパンが多いのも特徴です。ネーミングもひねりが効いていて「えっ?チーズケーキ」や「あんこ好きな人のためのあんぱん」といったパンはクスッと笑ってしまい、つい手を伸ばしたくなります。

左から、くき&練りわさびとベーコンが入った「わさべー」(240円)、ハード生地に大納言小豆が入った「大納言」(230円)、香ばしいパイ生地にシナモンが効いた自家製コンポートが入る「りんごのパイ」(250円)、ジューシーなソーセージをパン生地で巻いた「ビールのあて」(310円)。中島さんがお酒好きということもあり、クルミ入りの生地にクリームチーズとブラックペッパーが入った「赤ワインのあて」というパンもありますよ。

なかでも、こだわりのパンは2種類のバゲットです。ひとつは国産を中心とする小麦粉を週替りで使う「今週のバゲット」(240円)、もうひとつは福岡県産の小麦粉を使った「福岡さんバゲット」。小麦粉、酵母、塩、水というシンプルな材料で作られるバゲットは、配合を1%変更するだけでも味や食感が変わるほど仕込みが一番難しいそうです。「だからこそ作るのが楽しいですね。実験のように少しずつ変えながら作っています」。

「来てくださった方に楽しんでもらえる“遊べるパン屋”を目指しています。パンだけでなくおすすめの食材なども充実させていきたいですね」と中島さん。「いつも笑っているような顔が好き」というナマケモノに負けない笑顔で迎えてくれる小さなパン屋さんで、おいしいパンを楽しんでみてください。

●ぱん こさお

住所:春日市春日公園7-74 白石ビル102
電話:070-8414-2784
営業:8:30~18:00 ※売り切れ次第閉店
定休日:月・火曜
アクセス:西鉄天神大牟田線「白木原」駅より徒歩5分
Instagram: @pancosao

※記載している情報は2022年5月のものです。営業時間や定休日、価格は変更になる可能性があります。価格は特別な記載がない限り、税込みで表記しています。

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