福岡市博多区祇園町「焼き鳥とワイン 萬鳥（ばんちょう）」は、西中洲に店を構える星付きの和食店「しらに田」が手がける焼鳥店。焼鳥とワイン、そして日本料理を融合させた新しいスタイルの焼鳥店として2015年のオープン以来、人気を集めています。

2020年11月には薬院店をオープン。薬院六つ角のほど近くにあり、一見すると焼鳥店と思わないようなスタイリッシュな店構えです。祇園のお店は場所柄、会社帰りの人などが多いそうですが、こちらではよりゆっくりとプライベートな食事を楽しめるよう、全席に仕切りを設けています。

両店の店主を務める高﨑賢司さんは、焼鳥の名店「鳥次」の一番弟子として腕を磨いたのち、「しらに田」へ。「日本料理ならではの、季節感を活かして旬の素材を取り入れる料理を身につけたいと思いました」と当時の思いを語ります。「しらに田」での修業を経て、焼鳥と日本料理、そしてワインを楽しめる「萬鳥」をオープン。料理人としてはめずらしい「食鳥処理衛生管理者」の資格をもっていて、食用の鶏肉を衛生的に管理する知識や品質を見極める目をもつ高﨑さんが認めた鶏だけが使われています。

使用するのは、毎日届けられる熊本県産の朝引きの丸鶏。それを一羽一羽、部位ごとに切り分け、さまざまな焼鳥として提供されています。

「萬鳥」の焼鳥はコーススタイルで、写真の「焼鳥 Course ～ひととおり ～ 5種」（3,300円）のほか、7種（3,850円）、9種（4,400円）が用意されています。コースに加えもう少し食べたい場合は追加注文も可能です。

コースの内容は日によって異なりますが、この日は、（写真左から）レアに焼いたささみにワサビをのせた「さび焼」、砂肝、ネギをムネ肉で巻いた「ネギ巻」、自家製挽き肉で作る「だんご」、モモの付け根の肉を使った「ソリ」の5種。「だんご」の挽き肉には、さまざま部位の新鮮な肉を使用するこだわりが。鶏の味だけで十分なため、つなぎを使わず鶏肉100％で作られています。どのコースにも必ず入る名物です。味付けも塩だけなので、鶏肉のおいしさを存分に感じられる味わいでした。卓上の黒七味を少しつけるのもおすすめです。また、「ソリ」は希少部位の「ソリレス」のこと。1羽から焼鳥1本分しか取れない部位で、技術をもつ料理人でないとソリレスを取り出すことは難しいそうです。皮をカリッと焼き上げた「ソリ」は、モモよりも弾力を感じ、ジューシーな味わいでした。

この日はすべて一皿に盛ってもらいましたが、実際は1本ずつ、ベストなタイミングで提供され、おすすめの食べ方も教えてもらえます。

1本1本丁寧に焼き上げられていく焼鳥。炭は強い火力と火持ちのよさが特徴の「土佐の備長炭」を使用しています。

焼鳥に合わせるドリンクはワイン（グラス770円～）が「萬鳥」スタイル。フランスやイタリアなどさまざまな国の自然派ワインが中心のラインナップです。

お通しは、「しらに田」の名物「焼きごま豆腐」。丁寧に練ったとてもなめらかなごま豆腐と表面のカリッとした食感が絶妙です。

名物そぼろ丼、鶏スープ、お新香のセットはコースに＋605円で追加できます。そぼろ丼もも「だんご」と同じく、その日に作られた挽き肉を使っています。丸鶏のガラを使用した鶏スープも奥深い味わいでした。

丁寧な仕事と心地よい空間、そしておいしい焼鳥や料理。すべて揃っていながら想像よりもリーズナブルな価格がうれしいですね。カップルや少人数の集まりで焼鳥店を探す時に案内すると、一目置かれること間違いなしのお店です。