「殊代 cotoshiro」は2023年3月、大名にオープンしたSNSでも話題のお茶屋さん。厳選したお茶やお茶に合う一品、季節のお菓子、お茶のカクテルなどを楽しめる一軒です。

お店があるのは、中央区役所にほど近い大名のビルの6階。「神社のように神聖な気持ちで落ち着ける空間」をコンセプトに設えたという店内が、非日常を感じさせてくれます。

店内には、1、2名用の個室「麟-rin-」（写真）、3名まで座れる窓際のソファ席「朔-saku-」、最大8名でくつろげるソファ席「宵-yoi-」と、カウンター席が用意されています。シックで和モダンなインテリアも相まって、まるで高級旅館へ訪れたかのようです。

店長を務めるのは、東京・日本橋の老舗茶店「山本山」などでお茶の修業を積んだ赤坂麻衣さん。「殊代 cotoshiro」では、長崎県東彼杵町で4代続く「大山製茶園」の「そのぎ茶」を厳選しています。

「そのぎ茶は、勾玉のような形が特徴の玉緑茶。爽やかな潮風の吹き抜ける山あいの茶畑で育まれています。しっかりとしたうま味がありながらも渋味は少なく、清々しい香りとまろやかな味わいが格別なんです」と赤坂さんは話します。

茶釜で湯を沸かし、湯温や注ぎ方にも気を配りながら一煎ずつ淹れる玉緑茶、水出しのそのぎ茶（写真）、煎りたての焙じ茶、お茶を使ったオリジナルの茶酒カクテルなど、「殊代 cotoshiro」でのお茶の楽しみ方はさまざま。なかでも話題なのは、赤坂さんが淹れるお茶と食事を組み合わせた8：00〜11：30限定の朝ごはんメニューです。

「もっと気軽に楽しんでいただけるように」と以前提供していた朝御膳の内容をリニューアルし、4月中旬（開始日はInstagramで告知）からは2種類のセットが新登場。こちらは、炊きたての土鍋ご飯を主役にした「お茶と卵かけご飯」（1,600円）です。

最初に出される水出しのそのぎ茶「黎明（れいめい）」は、甘味の強いサエミドリと八十八夜前後に収穫された特別な茶葉ヤブキタをブレンドし、通常の倍ほどの時間をかけてゆっくりと抽出しているそう。まるでマスカットのように爽やかな香りとまろやかな甘味、雑味のないクリアな後味に驚きます。

お米は佐賀県七山産のコシヒカリなど、九州産を中心に厳選。鹿児島県霧島連山の天然水を使って注文ごとに炊き上げ、土鍋で提供されます。蓋を開けた瞬間に広がる甘い香りがたまりません。お味噌汁の具材と2種類の小鉢は日替わりで、取材時はタケノコとあおさのお味噌汁、上品な出汁を含ませた小松菜と舞茸のおひたし、濃厚な胡麻豆腐でした。

ツヤツヤのご飯に糸島の平飼い卵「つまんでご卵」をのせれば、至福の卵かけご飯も完成。甘味のあるご飯と新鮮でコクのある卵、特製のだし醤油のうま味も重なって、お箸が止まらないおいしさです。

続いて、もう一つの朝ご飯メニュー「お茶とおにぎり」（1,800円）もいただきました。こちらは炊きたての土鍋ご飯を握るおにぎりと、「つまんでご卵」を使ったプルプルのだし巻き卵が主役です。おにぎりの具材は、明太子・焼海苔の佃煮・黒毛和牛のしぐれ煮・じゃこと青菜・豚味噌・塩にぎりの中から2種類を選べます。

ふんわりと握られたおにぎりはふっくらモチモチで、海苔の香りが豊かに広がります。「明太子」は昆布のうま味が効いた上品な味わいで、豚バラ肉を粗く刻んでしっかりと炒め、香ばしさと食感を引き出した自家製の「豚味噌」もクセになるおいしさです。

ちなみに、15：00からの午後の部では「お茶と季節のお菓子セット」（写真）や「お茶とおにぎりのセット」、お酒やおつまみも楽しめるそうです。

「朝にお茶を飲むと一日の災難から逃れ、福を得ることができる」という「朝茶」の文化から生まれた、お茶屋さんならではの朝ごはん。ゆったりとお茶を飲み、丁寧に作られた食事を味わえば、素敵な1日を過ごせそうですね。朝ごはんメニューは、炊きたての土鍋ご飯を用意するのに30分ほどかかるため、予約後の来店がおすすめです。