やわらかい麺にごぼう天トッピングという博多うどんの文化が根付く福岡において、独自路線を貫くスタイルで注目を集めるうどん店があります。

2018年4月、舞鶴にオープンした「手打ちうどん 円清」は、讃岐ベースの手打ち麺にイリコ出汁という、福岡ではめずらしいうどんを楽しめるお店です。

埼玉県出身の店主・岩坂隆玄さんは会社員の頃からのラーメン好きが高じて、30歳を目前にラーメン店に転職。約3年間のラーメン店での修業中に旅行で訪れた香川県で讃岐うどんのおいしさに開眼し、讃岐うどん職人になった経歴の持ち主です。多くの人気店の店主を輩出した丸亀市「かな泉」で約3年間腕を磨き、地元・埼玉で自身が店主を務める「如水」をオープン。讃岐うどんのほか、東京・埼玉でよく食されるつけ麺スタイルの「武蔵野うどん」を提供していました。

その後、約8年間の営業を経て福岡で「手打ちうどん 円清」をオープン。理由を訪ねると「埼玉時代からお世話になっている方に福岡での出店を誘われたというのが一番の理由ですが、独特のうどん文化がある福岡でこの味を試してみたいと思って移転を決めました」と岩坂さん。そのため、メニューにはごぼう天うどんなど福岡うどんの定番メニューは一切なし。オープン当初は、ごぼう天うどんがないとわかると食べずに帰る方も多かったそうです。

ちなみに埼玉時代の店名「如水」は福岡藩祖・黒田官兵衛の出家後の法名に由来し、その正式名称が「如水円清」だったことから、現在の店名は「円清」と名付けられました。

「円清」の特徴はやはり何といっても手打ちうどん。岩坂さんは今年初開催された讃岐うどん職人による手打ちの祭典「SANU-1グランプリ」では地方予選を勝ち抜き、第1回のファイナリストにもなった実力者です。

ほかの店ではなかなか見かけない多彩なメニューのなかから今回は「イリコだしのあさりうどん」（800円）をご紹介。イリコのみを使用した出汁にあさりがたっぷり入った魚介のおいしさが詰まった一杯です。

最初に修業したラーメン店がイリコ出汁のスープだったこともあり、イリコの扱いは当時から研究を重ねていた岩坂さん。数種類のイリコを用い、うま味を最大限に引き出しながらも特有の雑味を抑えるタイミングを見計らって出汁を取っているそうです。さらに冷凍を経てうま味成分を増加させたアサリが入った出汁は一滴ものこしたくないほどのおいしさです。

熊本県産小麦「チクゴイズミ」を中心にブレンドした粉を使って毎日手打ちし、注文後に茹でられる麺は、讃岐うどんらしいコシの強さがありながらモチモチとした食感。なめらかな口当たりが心地よく、箸が進みます。

出汁のおいしさを堪能したら薬味のネギやショウガで味の変化を。ショウガのトッピングに讃岐うどんルーツのお店ならではです。

ほかにも野菜や果物など16種類の素材が溶け込んだ「カレーうどん」（1,000円）や野菜たっぷりの「しゃきしゃき野菜盛うどん」（950円）、「炙り肉うどん」（950円 ※13：00～）など名物うどんが勢ぞろい。いまの季節は限定の「味噌鍋うどん」などもラインナップしています。「メニューによって具材だけではなく出汁の味も変えているので、どれか気に入るメニューを見つけてもらえたら」と岩坂さん。

また年末には恒例の年越しうどんも予約制で販売されます。予約の締切日や受け渡し日などはお店のInstagramを確認してみてください。