別府市のなかでも源泉が集中する鉄輪温泉では、古くから温泉噴気で食材を調理する「地獄蒸し」での調理が盛んに行われてきました。その地獄蒸しを活用したイタリア料理を楽しめるのが「Otto e Sette Oita（オット エ セッテ オオイタ）」です。

モダンな宿「湯治 柳屋」の敷地内にあります。暖簾のかかった入口ではなく、左手にあるレストランに通じる通路から入店します。

こちらで腕を振るうオーナーシェフの梯哲哉（かけはしてつや）さん。由布院御三家のひとつ「山荘無量塔（さんそうむらた）」のイタリアンや「山荘無量塔」がプロデュースを手がける「別府湾サービスエリア」の料理長を務めたのち独立。大分市や別府市での飲食店経営を経て2015年に鉄輪に「Otto e Sette Oita」をオープンしました。

別府湾サービスエリアで料理長を務めていた際に、別府ならではの食材の豊富さに驚いたという梯さん。「由布院では由布院産のものを使うことが多かったのですが、別府には大分県の北から南まで、さまざまな山海の幸が集まってきます。大分県の食材のおいしさ、幅広さに魅せられ、ここに店を開くことを決めました」と語るように、料理に使う食材はほぼすべて大分県産のものです。

そして、「Otto e Sette Oita」に欠かせないのが地獄蒸し。源泉から噴き出す100℃の蒸気を利用した天然の調理法です。厨房には地獄蒸しのかまどがあり、絶えずもくもくとした噴気に包まれています。ナトリウム塩化物泉の源泉から吹き上がる蒸気が調理に適しているという梯さん。「塩分などのミネラル分が吸収されるのか、ただ野菜を蒸すだけでぐんとおいしさが増します。地獄蒸しを使うようになってから、イタリアンに欠かせないと言われる塩やオリーブオイルの使用量が減りました」。オープンから8年が経ったいまでは蒸した後に焼くなどアレンジも広がり、さまざまな料理に地獄蒸しを経た素材が使用されています。

お昼のランチコース（3,500円）は、本日の前菜、温泉パスタ、メインディッシュ、自家製パン、ドルチェ、カフェを楽しめる充実の内容です。器も日田市の小鹿田焼や九州で活動する作家作品などこだわりのものが選ばれています。

パスタは2種類から選ぶことができ、この日は「国東ふぐと野菜のラグー　ポモドーロ リガトーニ」にしました。温泉水で茹でたリガトーニは絶妙な塩加減と歯ごたえ。地獄蒸しで調理したフグはふっくら柔らか、ブロッコリーは甘味が存分に引き出されています。トマトソースに使われるトマトも蒸したあとに調理しているそうで、オレンジ色のソースになるのが特徴です。

メインディッシュは「吾一の黒豚 肩ロース地獄蒸し ビーツのソース」です。中津市の自然豊かな山国エリアで生産される「吾一の黒豚」の地獄蒸しは身がほろっとほどけるほど柔らか。目にも鮮やかなビーツのソースと絡めると至福の味わいです。付け合わせのサツマイモ「甘太くん」や焼いて仕上げたケールも地獄蒸しを施したものです。

地獄蒸しの効果と厳選された素材のためでしょうか、どの料理も素材の味が力強く伝わってくるものばかり。五感をフル稼働させて大分の自然を満喫したくなるコースでした。

古い建物の梁などを移設して作られたという店内はゆっくりとくつろげる大人の空間。鉄輪旅行の楽しみのひとつとしてちょっと贅沢なランチを楽しんでみてはいかがでしょうか。